蒔絵の値段

先に、金粉代の値上がりについてお話しましたが、その後、蒔絵組合員の蒔絵師の方とその件について話をしましたが、やはり頭を悩ましているようでした。
結局、打てるだけの手立ては既にやり尽くしているので、蒔絵代をあげることが出来ない物に関しては利幅を削るか、一つだけなら、赤字覚悟で仕事をこなしていると言っていました。
利幅を削ると言っても現在の職人の利幅なんて言うのは殆ど無いに等しい状況です。寝ずに頑張って仕上げる時間を短縮するくらいしかできません。
　輪島の塗師屋さんからの依頼が少ないのに加えこの状況が続けば、蒔絵をつけたくても良い仕事（当たり前の仕事）が出来なくなってしまいます。強いては蒔絵の内容の低下、輪島塗の品質の低下に直結します。
塗師屋さんも果たして自分の利幅を削ってでも自助努力をしているのかはわかりませんが、今後のことを考えると、業界全体、また、輪島市が職人さんを何とか守っていかないと職人自体がいなくなってしまう現実が差し迫っているのは確かなことです。
先日も大きな漆器店がリストラをしました。年末に向け本来なら忙しくならなくてはいけないのに、輪島の漆器業界はかなり衰弱しているように思います。

止まらぬ金粉価格

とうとう蒔絵で使う金粉一包み（4グラム）24，000円を突破してしまいました。
4グラム、約1万2千円程で長い間安定していただけに殆どの蒔絵師はそのレートで蒔絵代を出していたと思いますが、ここまで高くなった今日、みなどうしているのか同業者として不思議でなりません。
この急激な価格上昇分、これまでの蒔絵代に上昇分に応じた価格を添加できる人は殆どいないと思います。
蒔絵を依頼する方も勿論そんな事は許してはくれません。
以前、蒔絵組合を通して市の不況対策室から金粉代上昇に関するアンケートが回ってきていました。もしかしたら市からいくらかの補助が出るかもしれないと耳にしましたが、その後、あのアンケート結果はどう生かされたのか全く音沙汰がありません。
　所詮、お役人仕事、この切迫した現状はわかっていないと言うことなのでしょうか。
蒔絵組合員全員にアンケートをとった以上、せめてどうなったのかの報告があってしかりだと思うのですが、こんな風に考えるのは自分だけでしょうか？

蒔絵材料 貝

蒔絵では様々の材料を使いますが、螺鈿に使う貝もいろんな種類があります。
使用目的によりその特性を生かした貝を選んで使います。
一番左の玉虫貝は今は入手困難な材料です。金色貝とも呼ばれグラムあたり金粉よりも高い値段でした。在庫に少し持っていますがもったいなくて使えません。(-_-;)
最近は海外から輸入されるメキシコ貝がこれに取って代わっています。
（光具合と色合いは玉虫貝には劣りますが）
こちらの貝は主に色別に選別したあと砕いて荒さも選別して使うと効果的です。
その模様がおもしろいので自分はそのまま使ったりもしますが。

鳳凰飾り皿

直径80センチの飾り皿に鳳凰の蒔絵の依頼を受けましたが、何とか先が見えてきました。時間的に艶上げを呂色屋さんにしてもらう余裕がないので今回は自分で艶をとります。
　しかし、これだけの大きな物になると乾かすための湿風呂に入りません。
そこで、こんな場合はうちでは画像のような感じで湿めをかけます。
塗り物に傷が付かないので発砲ブロックが結構重宝しています。

鳳凰飾り皿

　作図にもかなりの時間をとられ、製作期間に余裕のない仕事の為、睡眠時間を削り時間を追いかけて仕事をしています。気持ちは焦りますが、漆は生き物、こちらの都合に合わせてはくれません。じっくり乾かす時間はとらないと研ぎに失敗することになります。
　　これからの時期、蒔絵師は皆、こんな感じで仕事をしていると思います。